一方でとりわけ
ゲーム理論の経済学への浸透を受けて、経済学の定義は変化しつつある。例えばノーベル賞受賞者
ロジャー・マイヤーソンは、今日の経済学者は自らの研究分野を以前より広く全ての社会的な制度における個人の
インセンティブの分析と定義できると述べている。
[Myreson, R. B. 1999 Nash Equilibrium and the History of Economic Theory. Journal of Economic Literature, 37, no. 3, pp. 1067-1082]このように現在では、
資本主義・
貨幣経済における人や組織の行動を
研究するものが中心となっている。広義においては、
交換、
取引、
贈与や
負債など必ずしも
貨幣を媒介としない、
価値をめぐる人間関係や社会の諸側面を研究する。このような分野は
人類学(
経済人類学)、
社会学(
交換理論)、
政治学(
公共選択論・
合理的選択理論)、
心理学(
行動経済学)と隣接する
学際領域である。また
労働、
貨幣、
贈与などはしばしば
哲学・
思想的考察の対象となっている。但し、経済システムの働きに深く関わる部分については
経済思想と呼ばれ、経済学の一分野として考えられることも多い。
自然科学に比べ不確定要素の大きい
人間が深く関わる物が研究対象である性質上、数理的理論・実験が困難な分野が多い
人文科学・
社会科学の中において、特に、積極的な数理的検証を試みている事が挙げられる。そうした性質から、経済学は
物理学が「自然科学の王」と呼ばれているのに対し
社会科学の女王と呼ばれている。しかしなお、人間の心理も関与する不確定要素の多い
複雑性システムの数学的モデル化は容易ではない。現実の経済現象の観察、モデル構築、検証という一連の循環的プロセスによる研究方法は一部存在するもののいまだ十分であるとは言えない。