東部が激しく侵食されたため現在の碓氷峠は直線距離で約10kmの間に
標高差が500m以上に達する急峻な片勾配の峠となっていて、
群馬県側の麓・横川の標高は387m、
長野県側の
軽井沢は標高939mである。特に、
中山道を例に取ると
坂本宿から
刎石山までの水平距離700mの間に標高差が300mもある
[野村、1996年、P.6]。山脈を
トンネルで抜けることで峠越えの高低差を解消できる一般的な峠と異なり、通行には
近代に至るまで数多くの困難を抱えた。
気象学的にも、碓氷峠は
関東地方と
中部地方の境界にあたる。日中、関東地方南岸では大規模な
海風(太平洋海風)が生じて、およそ秒速5mほどで大気が内陸に向かって進む。一方で中部地方内陸部では上空に低圧部が現れ、谷から山頂に向かう風が生まれる。午前中は碓氷峠にこれら2つの流れが両側から向かってきて、峠では風が真上に向かって
平衡状態となる。午後になると
地表面の温度が高くなって双方の勢いが増すが、関東地方からの流れがより強くなるため南東風が吹き、関東地方の大気が中部地方に流入する経路となる。なお夜間には海風が支配的となって南東風が続く
[鶴田、1985年、P.242]。また、山を登る空気は気圧が低くなるとともに
膨張して温度が下がり、
飽和した
水蒸気が
霧となるため、関東平野から碓氷峠を登って流れ込む南東風が原因となって軽井沢では年間130日以上も霧が発生している
[朝日新聞 2006年6月14日付 夕刊、マリオン面、P.6]。